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「写真は紙切れ!?」若者はなぜ写真をプリントしないのか

既に皆さんお悩みの通り、写真のプリント離れ、カメラ離れが深刻化しています。皆さんは、この現状をどのようにとらえていますか?

カメラのデジタル化、スマホの台頭やSNSの発達など、要因はいろいろと思い浮かぶでしょう。しかし、根本的には何が原因なのでしょう?

先にお断りしたいのですが、この記事では「プリント離れの犯人探し」をするつもりはありません。皆さんが納得するようなすっきりした結論に着地するわけでもありません。

今回の記事では、この「問題」の現状について改めて整理し、皆さんと一緒に考えたいと思います。「問題」とは何か?それはもちろん、「プリント離れ」、そして「フィルムを知らない世代にとっての写真との付き合いかた」です。
写真プリントを取り巻く現状はどのようになってるのでしょうか?そして、若者はどのように写真を捉えてるのでしょうか?


プリントの現況って?

それでは最初に、写真プリントの現状を見ていきましょう。既にみなさんが肌で感じているように、プリントを取り巻く現況は悪化の一途をたどっています。いったい、どのような経緯だったのでしょうか。

まず、発端はデジタルカメラの台頭と、それに伴うフィルムの需要の減少です。フィルム出荷数は1998年にピークを迎え、その後2008年までの10年間で10分の1になったと言います。
写真撮影がデジタルになったことで、撮影後の写真は現像をせずとも液晶モニターで確認できるようになりました。ここからフィルム時代は必須工程だったプリントの需要が激減します。
また、プリントの内訳の中でもホームプリントやネットプリントが比率を高めてきました。

参考:2013年 ホリスティック企業レポート キタムラ 7/21ページ 


プリント需要が落ち込むと、今度は写真店の数が減ってきました。ピーク期には全国に34000店舗あった写真店は、2013年時点で9000店舗まで落ち込んだのです。

参考:2015年 フジフィルムホールディングス企業説明会資料


しかし、その一方で写真のショット数は増加し続けています。
フィルムによる物理的枚数制限が無くなったからであり、誰もがスマホを持ち歩く社会になったためです。内蔵カメラのスペック向上と通信手段の発達によって、「写真を撮る」行為は人々の日常に一層浸透してきたのです。

2016年のMMD研究所調査では、スマホユーザー1人辺りの平均的な写真保存枚数は1351枚。10代の女性にいたってはなんと平均3072枚の写真を保存しています。

参考:https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1578.html


何をそんなに撮っているんだろう……?

プリントは減り続けているのに、写真(画像)は増え続けている。これはなんとも皮肉な結果で、一見すると矛盾すら感じます。それでも、10年前よりも人々は写真を撮っているのが現実です。より身近になっているのです。

すなわち、人々の写真の捉え方は確実に変化しています。

では、今の人々にとって写真はどのような立ち位置なのでしょうか?どんなときに写真をとって、どんなふうに扱われているのでしょうか?
次章では、プリントしない世代である20代、10代の若者に着目して、この疑問について考えていきます。


若者と写真の付き合い方とは

 さてお待たせいたしました。ここから本題に入っていきます。
どうして若者はプリントをしないのでしょうか?……そもそも写真屋さんを知っているのでしょうか?

再びフジフィルムの資料を参照すると、10代、20代の若者の写真屋の認知度は2004年時点で83%、2013年では61%。実に4割が「写真屋?どんな店?」と感じてるみたいです。
また、2010年時点での調査では、20代の約7割が写真屋の利用経験がないとのこと。

参考:http://j-net21.smrj.go.jp/establish/research/productsales/cons-dpe.html


爆発的に普及したiPhone4の発売が2010年、あれから7年が経過してこれ以降の若者だと更に利用経験が減ってそうです。

じゃあスマホで撮った写真をどうしているのでしょうか?
皆さんも体感的に理解している通り、若者は撮った写真をSNSで共有しています。なぜ共有するのか、若者のビジュアルコミュニケーション(写真・動画の共有)について分析した興味深い資料があります。

参考:2015年NTT アド


こちらの資料を要約すると、どうやら思い出の共有や仲間同士が目的のようです。「写真を共有する目的」として意識すらしてないのではないでしょうか。
対面の会話で身振り手振りを交えるように、コミュニケーションにおいて自然な流れで写真を利用しているようです。
たぶん、一枚一枚の写真を見返す機会は少ないでしょう。投稿した時点で消費されてしまい、そのストックがスマホに溜まっていってるにすぎないのです。

このように、「コミュニケーション」の手段として写真を使用している若者の視点からすると、従来の「記録・保存」といった紙の写真のメリットはピンとこないでしょう。
撮影し、SNSに共有した時点で「記録も保存」も完了しています。もちろんスマホが故障したり、SNSのサービスが終了してしまえば写真は消えてしまいます。しかし、スマホの普及とSNSの発展の中で生きる人々に、そんなリスクが想像できるでしょうか?フィルムの衰退だって、我々は想像できなかったのですから。だいいち、データ消失して後悔する写真なんて、若者は撮っていません。

授業の板書や、放課後の一コマ、今日の晩御飯、そんな写真が消えて後悔するでしょうか?いまや思い出とメモ帳の区別すら曖昧になっています。写真を撮る機会が限りなく細分化されてきて、相対的に価値が減っています。仮にこれら全てが写真としてプリントされたとしても、結局のところ「紙切れ」にすぎないのではないでしょうか。

  

「真実」を写す時代は終わった?写真加工なんて当たり前

とはいえ、写真を良い色でプリントする技術・良い色で撮る技術は写真屋さんの技術です。しかし、このように写真で「自分を伝える世代」には、もしかしたら通じないのかもしれません。
何故か。現代の若者にとっては画像の加工は当たり前に行う処理のひとつだからです。写真という言葉は「真実」を「写す」という字を書きますが、この意味すらどうやら変わってきているようです。


いまや、SNSに画像を投稿する人のうち、約4割は画像を加工して投稿しています。加工をしない人にとっても、日常的に触れる画像の多くは既に加工された画像になっています。
ビンテージ風にフィルターをかけたり、美肌効果をかけたり、複数画像をコラージュ、文字を入力、そんな加工もスマホで直感的にできるようになりました。彩度やコントラストの調整、明暗補正にいたってはiOSの標準アプリですらできる時代です。

10代の女性にいたっては、ひとつの画像を編集するまでに平均で3つのアプリを使うとのこと。

参考:https://japan.cnet.com/article/35096500/


彼らにとって、画像加工は写真のメッセージ性を高める手段の一つにすぎません。

こんな「加工が当たり前の世代」からすると、写真屋・写真館の持つ現像技術や、フォトレタッチも魅力も、おそらく「やってもらって当たり前」に捉えられ、プロにしかできない技術とは認識されていないのではないでしょうか。
パッと見た時に、「スマホではできない」「プロは違う」と思ってもらえなければ、画像処理も技術として認めてもらえない。
……もしそうだとして、その結果生まれた写真を果たして「真実」を「写した」ものと言えるのでしょうか。


写真屋さんの利用方法がわからない?


とはいえ、様々な調査によれば「お気に入りの写真をプリントしたい」という需要は根強く存在しているようです。前述のMMD研究所調査によれば、56%の人が今なお写真をプリントしたいと考えています

参考:https://mmdlabo.jp/press_release/detail_1463.html


プリントするほどではない写真が増え続けている一方で、いつまでも保存したい写真は確かに存在するのです。

ここからは推測ですが、写真をプリントしない世代にとって、写真をプリントするための心理的ハードルは、私たちの予想よりもはるかに高いのかもしれません。
「どこでプリントしたらいいのか」「どういう手続きをすればいいのか」「どの写真を選べばいいのか」「プリントした写真をどうするか」「写真屋はあるけど、入っていいのかわからない」
写真をプリントしたい、手元に残したい、と思っても、これだけ分からない事があったら、つい諦めてしまいそうです。

ではどうすればプリントしてもらえるのか?
冒頭におことわりしたとおり、この記事は歯切れのいい結論に飛びつくための記事でも、誰かを犯人扱いするための記事でもありません。

タイトルの「若者はなぜ写真をプリントしないのか?」、この問いに対してあえて一言でまとめるとすれば
「プリントそのものに馴染みがなくなった上に、プリントの役割を代替する手法が増えてしまったから」と言えるでしょう。ただ、プリント事情や若者と写真についてを概観して分かるように、プリントをしない若者の事情は決して一つの要因に依るものではありません。
状況を打開するためのひとつのヒントとして、やはり業界最大手のフジフィルム様の販促方法を参考にしてみましょう。


 「ましかくプリント」http://shaprise.jp/

例えば、SNSで一般的な1:1のフォーマットの写真を普及させる「ましかくプリント」、撮ったその場で共有ができる「チェキ」。これらは確かに、若者の写真の使い方に沿った商品と言えます。
フォトブックによって、写真にストーリーを与えてあげたり、アルバムカフェのような写真を楽しむ方法の提案もそうでしょう。
また、カメラメーカー各社もスマホよりも質の高い写真を撮る手段として、手軽で高画質なミラーレス機のラインナップを拡充しています。

フィルム時代よりも写真を撮る若者たちに、プリントした写真をより身近に感じてもらうため、私たちで一緒にその方法を考えていかなくてはなりません。その中には、お店の作り方、接客、撮影手法など、皆さんが店頭で主役となる方法もたくさんあるはずです。


フォトルプロプラスでは、そんな写真屋の皆さんのお役に立てるよう、これからも情報発信して参ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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