ニコン「D500」 全部入りハイスペック機 実写レビュー

「全部入り」と言って差し支えないと感じる、ハイスペック機の「D500」。
幸運にも、テスト機をお借りできたのでD500のレビューを行いました。


夜間のテニスコートでテストシューティングを行いましたが、ちょっと不完全燃焼。
ということで、メディアにも取り上げられ、認知度が上がってきている「シルホイール」のパフォーマーとダンサーの方にご協力いただき、数人のNikonユーザーで体験会を行いました。


機材構成は以下のとおりです。

  • レンズ:純正キットレンズ、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
  • メディア: サンディスク製SDカード(32GB、リード80MB/s)
  • 記録画素数:最大サイズ(5568 x 3712)
  • 記録形式:RAW(L 14bitロスレス圧縮) + JPG(NORMAL)
  • ピクチャースタイル:SD
  • 添付画像:Lightroom CC ストレート現像(ピクチャースタイル、レンズキャリブレーションのみ適用)


最新機構を手の中に。全ての人に優しいグリップ。【外観・ハンドリング】

普段使っているD810より一回り小さい印象ではありますが、ボタン配置、ファインダーの丸窓、ルックスは上位機種のそれと同等。重厚感のある作りに少し覚悟を決めて手にした瞬間、想像以上の持ちやすさに驚きました。


D750にも似た「深めのグリップ」で、指への引っ掛かりが極めて良く、カメラを保持するのに余計な力がかからないのです。

コレなら、手の小さな方や女性でも楽々とハンドリング出来るのでは無いでしょうか。



旗艦機同等の操作性を手に入れた、リトルD5【ボタン・機能配置】

改めてカメラ全体を見渡すと、D5と操作系統が共有されている事を強調するようなサブセレクターがあり、フラッグシップ以外には標準装備だったポップアップフラッシュが排除されています。

サブセレクターはジョイスティックのような操作性で、ファインダーを覗きながら自由にAF測距点選択出来ます。



ファインダーいっぱいに測距点(選択可能測距点55点)が広がるD500ですが、マルチセレクターでの測距点選択に比べ、格段に速く、楽になりました。

また個人的には「D3桁以上のクラスにポップアップフラッシュは不要!」と常々思っているので、この変更点は大歓迎です。


本機世代では、MODEボタンが左肩、ISOボタンが右肩に再配置されています。

最初こそ戸惑うものの、実に理にかなった配置だと感じました。被写界深度やシャッタースピードを変えずに、感度で露出をコントロールする。幅広い常用感度域を活かしたデジタル一眼ならではの撮影スタイルに、メーカーが応えた形でしょうか。


ボタンのイルミネーター採用で、暗所での操作が格段に楽になりました。旧世代ユーザーとしては大変うらやましい部分です。



官能性と引換えに得た快適性と確実性【連写・シャッターフィール】

何と言っても「約10コマ/秒」の連写です。ミラーの音がたまりません。連写コマ数がいくら凄くても、AF精度がお粗末なら本末転倒ですが、本機ではそんな心配も不要でしょうか。RAW(L)で撮っててもバッファフルになることはなく、極めて快適でした。


Nikonといえば官能的なシャッター音ですが、本機は少しおとなしい「シュコンッ」としたシャッター音。官能性を優先する方には物足りなさを感じるかもしれませんが、D810にも通じるようなシャッターフィールで、非常に好感を持てました。


ミラーショックの軽減は、不要な微ブレ予防にも貢献しているようです。



ファインダーを覗いて驚く、153点のフォーカスポイント【AF】

画面一杯に広がるAF測距点は迫力満点です。サブセレクターとの相性もバッチリなので、大量の測距点から狙ったポイントを選ぶのにも大きな苦労はしませんでした。


普段はポートレートメインのカメラマンばかりが集まったため、動体撮影の評価には不安を抱えながらテストへ。コンテンポラリーダンスのダンサーさんにご協力いただき、スカーフを手に持ってジャンプやターンをしてもらいました。


コンティニュアスAFに変更、様々なエリアモードで撮影してみます。

D5と同じAFモジュールを採用しているため、当たり前のように超高速なAF性能。逆光下の難しい場面でもきっちり掴んで離しません。状況に応じたエリアモードやアルゴリズムの設定等、適切な利用に応じて最大限のレスポンスをしてくれます。


性能を引き出すには説明書を熟読し(超基本ですが)、スキルを磨いていく必要がありますが、撮ってて本当に楽しいカメラであることは間違いありません。

 

【f/2.8, 1/2000秒, ISO3200, 102mm, 日中室内】



動体x高感度のインパクト【解像感・画質・感度】

夜間のテニスコートでテスト撮影です。
キットレンズの性能も良いのでしょうが、キリッとしっかり解像します。高感度耐性も十分で、D810比で確実に1段以上は余裕があります。


35mmセンサーのD5と比べても、ほぼ同等。APS-Cでこれには驚きました。ノイズを抑えながらも塗り絵っぽい訳ではなく、しっかりディテールを残しています。噂に聞いていた低感度ノイズも、試用環境では全く気になりませんでした。


なお、高感度域で2機種とD810を全く同じ設定(露出、レンズ、ピクチャースタイル)で撮影し比較すると、前者の露出がややアンダーになりました(0.3段未満、ヒストグラムにて確認)。僅かながら、センサー、画像処理エンジンの違いが出ているかも知れません。


また、高感度を活かした室内撮影では、新機能のフリッカー低減機能が効果を発揮しそうです。

 

【f/4, 1/500秒, ISO6400, 80mm, 5月19時半頃】



タッチ!タップ!フリック!本当に使える快適装備【液晶】

驚きだったのが、背面液晶の完成度です。236万ドットの高解像度、3.2型と必要十分なサイズの新型タッチ液晶は、D750譲りのチルト機構とベストマッチング。


タッチ液晶は、一世代前のスマートフォン程度のタッチ精度・スピードを確保しており、タップやフリック(めくる)操作にも対応。


再生時には素早い画像切り替え・拡大縮小で、セレクトやピントチェックが格段に楽になります。試用時には、カメラを小指〜中指に引っ掛けながら、親指での操作が出来ました。ここでも、本体の持ちやすさが功を奏しています。

ただし、再生画像の反応速度と記録メディアの記録速度は多少比例するようです。出来るだけ高速なメディアを使う理由がここにもありました。


D4桁台譲りのチルト機構を採用したことで、より自由なアングルで撮影できるようになりました。タッチ液晶はフォーカスポイントの選択やシャッターも兼ねているので、スナップ撮影からじっくり構える静物撮影まで、幅広く対応出来そうです。


一方、D300/S直系のDXフラッグシップ機としては、構造上の耐久性に不安が残るのも正直な感想。ユーザー層は割とハードに機材を使うカメラマンだと思うので、タフな現場での実績作りに期待したいと思います。



タブレット連携でいつものワークフローを加速【ネットワーク機能】

wi-fi、bluetooth等、ネットワーク関係の機能を内蔵したのは大正解。(テスト時はiOS対応アプリが未発表につき検証できず)


年々加速するデジタル時代のスピード感の中、撮影のワークフローに直接的に影響するネットワーク機能は、下位機種ならではの「便利機能」ではなく「必須機能」になっていると感じています。

PCとのテザー撮影には外部機器(WT-7)が必要なものの、上記機能をコンパクトなボディに収めたのは本当に凄い。


なお、当然ながらネットワーク機能を有効にすると、極端にバッテリーの消耗が激しくなるようです。
必ず予備バッテリーや縦位置グリップを用意するなど、余裕のある撮影を心がけたいものです。


それにしても、WT-7のデザインはもう少し何とかならなかったのでしょうか。縦位置グリップ型にするだけでも随分マシだと思うのですが・・



旧世代との互換性優先で、やや不利な面も。【バッテリー】

D7000系からD3桁台と共通のEN-EL15バッテリーです。
テスト時はAF-Cモード多用の連写モードで約800枚撮影、テスト後の電池残量38%でした。なお、バッテリーのバージョンによって放電特性が変わる為、旧仕様品では撮影可能コマ数に影響が出る事があるようです。

[参考リンク:ニコンデジタル一眼レフカメラ「D500」ご愛用のお客様へ]



4K時代を見据えたスペック。動画AFは進化無し【動画】

クラス初の4KUHD動画収録に対応するなど、確実に次世代機のスペックを意識したD500。
とは言えスチル専門の私、せっかくの機会にも本格的にはテストしておらず、動画そのもののチェックは行えませんでした。詳細のレポートは専門家にお任せして、D810比での感想だけでもお伝え出来ればと思います。


旧世代機を踏襲したパワー絞りやHDMIでの外部出力など、一歩進んだ撮影を身近にする機能は健在です。加えて、本体側の電子手ぶれ補正(FHD/HD収録時のみ)の採用や、チルト式タッチ液晶を活かしたフォーカス等、着実に進化している機能からメーカーの本気度が伝わってきます。


但し、動画撮影中のコントラストAFの制御は旧世代機と比べて練られているように感じるものの、ライブビューでのタッチAF等の精度・スピードには辛い物があります。
また、レンズのAF駆動音も気になるので、どうしても使う場合は外部マイクが必須でしょう。


新機能の実装で、「1台手持ちで手軽に撮影」するような場面を思い浮かべたのですが、この点は他社機種(ミラーレス機含む)の技術が先を行っている印象でした。



現場目線の独自機構。使えるレンズ微調整【その他機能】

Nikonの上位機種は、装着レンズ毎のピント調整が可能なAF微調節機能を持っています。
従来の方法は凄く面倒(手順を書きだすのも面倒)だったのですが、D500はライブビューでのピント合わせ+ボタン操作で微調節と登録が完了するとの事。定期的に使う機能だけに、非常に重宝しそうです。

また、多重露出モードの多様化(比較明、比較暗の追加)は楽しめる機能でした。

ストロボを使った撮影などで、背景と被写体の露出関係を変えずに撮影でき、狙い通りの表現がカメラで完結するのは快感です。ファームウェアでどうにかなるなら、他機種にも実装して頂きたい機能の一つです。



外部機器との連携に注意【いまいちなところ】

とにかく「全部入り」の凄みを感じます。
それなのに凄くバランスよく纏まっており、ぱっと思い当たる致命的な欠点はもちろんありません。強いて言えばPvボタン等がやや押しにくいと感じました。こんなもの、慣れで解決できそうな部分ですね。


そういえば、ProfotoのTTL対応リモコンとの相性が良くないかもしれません。
原因不明のエラーでシャッターが切れなくなる事象が発生しました。先進機器では往々にしてよくある相性問題なので、どちらかのファームアップで解消されると思われます。TTL制御機器を使っている方は念のためご注意下さい。

 【Profoto B1 2灯使用 f/2.8, 1/400秒, ISO200, 15mm】



待った人を幸せにするD500【総評・現在使ってる機材との比較】

今回はD300/Sのユーザーが居なかったのが残念ですが、借り物を使った記憶を辿れば「スペックだけなら十分納得出来る」と思います。当然といえば当然ですが。


なお、前述のように機能マシマシの一方、電池の持ちに課題が出てきたり液晶稼働部分の耐久性に疑問があったり、新世代機ゆえのシャッター機構改善(官能性の低下)等もあります。

また、記録メディアに新たに加わったXQDカードも大きなトピックでしょうか。

同時にUHS-II対応のSDカードスロットも装備しているので、記録スピードの懸念や導入へのハードルを感じる必要は無いかもしれません。


D800系とは完全に住み分けが可能なので、ユーザーにとっては買い増し対象となりそうです。あるいは、D800系後継機との共存も夢があります。


ただ、試用したD700系ユーザーは本機とD750で迷いつつ、後者を導入しました。フルサイズのレンズ資産や価格、自身の撮影現場を考慮した総合的な判断との事。確かに、沖縄のウェディング撮影では連写や高感度は不要かも知れません。


スポーツ、学校イベントの写真撮影等が多いカメラマンには、きっと何かをもたらしてくれる予感がします。私は単純に物欲を刺激されました。



【後日談】

テストユーザーの1人が、D500を購入しました!直近の機種遍歴がD3SからD750という彼。D500セレクトの理由は「同じレンズ資産が倍になるから」。FX機のレンズをDX機で共用できるシステムは、機材セレクトの重要なファクターになるようです。




今回ご紹介した『Nikon D500』は当サイトでも取り扱っております。
プロ向けの卸価格で販売しておりますので、ぜひご確認下さい。

商品リンク: フォトルプロ > 「Nikon D500 ボディ 」

商品リンク: フォトルプロ > 「Nikon D500 16-80VRレンズキット」



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・「スタジオで活躍しそうなニコンAF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」



寄稿: 合同会社OMNIVAS 西平千尋

寄稿: 合同会社OMNIVAS 西平千尋

[ウェブサイト] http://omnivas.jp/

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